
脱炭素経営はじめの一歩|企業が知っておくべき5つのこと
2030年に向けて、脱炭素社会を実現するための動きが世界的に加速しています。背景にあるのは地球温暖化の抑制や資源の枯渇です。どんな企業でも「脱炭素経営」や「カーボンニュートラル」は避けられない課題です。ここでしっかりキャッチしておきましょう。
- 1.カーボンニュートラルをおさらい
- カーボンニュートラルの目標について
- その達成期限とは?
- カーボンオフセットとの違いって?
- 2.国のGX(グリーントランスフォーメーション)方針とは?
- 再生可能エネルギー市場の現状
- 3.GXによって企業が受ける影響とは
- GX推進法とはどんな法律?
- GXが会社の収益向上にプラスになる?
- 4.脱炭素経営に取り組むための3ステップって?
- 5.業種別 |カーボンニュートラルを宣言をした企業
- まとめ
1.カーボンニュートラルをおさらい
カーボンニュートラル(Carbon Neutral)とは簡単にいうと「カーボン(炭素)をニュートラル(中立)な状態にする」ことです。これは「二酸化炭素の排出量と、植物などが吸収する二酸化炭素と合わせてプラスマイナスゼロにすれば問題はなくなるよね!」という考え方ですが、環境用語としてすっかり耳慣れたつもりでも似たような言葉も多く、なかなか身につかない方もいるかもしれませんね。
カーボンニュートラルの目標について
カーボンニュートラルは21世紀になって、環境に関する国際会議で各国の首脳が次々とカーボンニュートラルを「宣言」したことで一気に世界中に広まっていきました。
日本では2020年10月の臨時国会で、当時の菅(すが)首相が「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことが始まりとされています。「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにし、脱炭素社会の実現を目指す」という目標で、同年12月には経済産業省が中心となり「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。

出典:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」より引用
その達成期限とは?
この「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにし、脱炭素社会の実現を目指す」という目標について、当時はほとんどの方がピンと来てなかったと思います。しかしこれより後の2021年10月の閣議決定では、地球温暖化対策推進法に基づく2016年5月の閣議決定が見直されました。それが「2030年度において、温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すこと、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けること」です。

「2030年までにまず何をするんだっけ?」と迷う方もいるかもしれませんが、2050年までに達成すべき「カーボンニュートラル宣言」の前に、2030年までの目標として「地球温暖化対策計画」がある、と覚えておきましょう。
カーボンオフセットとの違いって?
ちなみに似た言葉にカーボンオフセット(Carbon Offset)があります。オフセットは埋め合わせるとか相殺(そうさい)するという意味で、世界のカーボンオフセット市場では温室効果ガスの排出量や削減量が数値化され、クレジット( Credit)として取り引きされています。
簡単にいうと「排出した温室効果ガスをゼロにするための具体策」で、努力しても削減が難しい場合、排出量に見合う他者の削減活動へ投資して埋め合わせることをいいます。日本では国が認証するJ-クレジットが手段として使用されています。

出典:Jクレジット制度について
2.国のGX(グリーントランスフォーメーション)方針とは?
知っておきたい脱炭素経営に関すること・その2として、GX(グリーントランスフォーメーション)があります。グリーントランスフォーメーションとは、地球温暖化などの環境課題を解決しながら、経済成長を両立させる社会変革の取り組みで、2050年のカーボンニュートラル宣言を実現するために欠かせないものとされています。
その内容は、温室効果ガスを発生させる石油や石炭などの化石燃料に頼る社会から、太陽光や風力といった再生可能エネルギー中心の社会へと変革を目指す取り組みを意味しています。
再生可能エネルギー市場の現状
再生可能エネルギーの中でも、太陽光発電や風力発電については、かなり普及している印象かもしれません。下記は第6次エネルギー基本計画に基づく「再生可能エネルギーの導入状況」です。パーセンテージの下のかっこ内は、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスの、すべてを合わせた発電電力量(kwh)を表しています。

出典:資源エネルギー庁2024年6月13日「再生可能エネルギーの導入状況」P2の表を引用
これによると、再生可能エネルギーの利用は10年間で確実に増えていますが、注目したいのは2030年の数値です。2030年までにこれらすべての再生可能エネルギー比率を36〜38パーセントまで引き上げるという目標です。
3.GXによって企業が受ける影響とは
上の図で示したように「2030年度に温室効果ガス46%削減を目指し、さらに50%までに高める」という目標は、なかなか難しい課題といえますが、国は企業や国民が確実に実効できるように様々な制度や補助金などを投入し成し遂げるつもりです。その表われとして「GX推進法」があります。
GX推進法とはどんな法律?
GX推進法とは、2023年6月に施行された「2050年のカーボンニュートラル実現」に向けた経済成長と脱炭素化を両立するための法令で、正式には「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」といいます。
GX推進法では今後10年間にわたり、GX経済移行債の発行や、成長志向型カーボンプライシングなどにより、官民合わせて合計で150兆円となる資金を調達し、日本のGXを推進していくための活動と計画が規定されています。
GXが会社の収益向上にプラスになる?
中小企業白書の第5節「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」によると、近年は中小企業・小規模事業者も原材料や部品の調達、製品の使用も含めてサプライチェーン全体の排出量削減の動きが出てきており、カーボンニュートラルの取り組みを進めることは、新たな需要を獲得するなど、収益の向上にプラスになる可能性があると示しています。
参考:2024年版「中小企業白書」 第5節 GX(グリーン・トランスフォーメーション)
4.脱炭素経営に取り組むための3ステップって?
前述したとおり、GX(グリーントランスフォーメーション)とは、地球温暖化などの環境課題を解決しながら、経済成長を両立させる社会変革の取り組みです。企業が脱炭素経営に取り組むためのステップとして下記の3つが挙げられます。

出典:環境省「脱炭素経営で未来を拓こう」を参考に弊社で作成
もともとは「光熱費や燃料費を下げたい」とこのコラムにたどり着いた方もいるかもしれません。しかし今、脱炭素経営に「乗ること」は、会社の競争力を強化し収益の向上に貢献し、知名度を上げ、好条件での資金調達や、国や自治体からの支援を取り付けることにもつながるのです。
ちなみに「測る」「減らす」の2ステップについては、温室効果ガスの排出量の算定・可視化と削減支援までをワンストップで提案するサービスがエネブリッジで始まっています。
エネブリッジでは、温室効果ガス(GHG)の排出量の測定や可視化、削減までも支援する、法人向けワンストップサービスをご提案しています。
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5.業種別 |カーボンニュートラルを宣言をした企業
この項では、実際に日本でカーボンニュートラルの目標を宣言した企業を業種別に紹介します。日本経済新聞がまとめた資料によると2022年11月の時点で、カーボンニュートラルを宣言した日本企業は472社となります。下記はほんの一例ですが、一覧にしてみました。
【カーボンニュートラル目標を宣言した企業一覧】
建設業 積水ハウス/大和ハウス工業/鹿島建設など
食品 アサヒグループホールディングス/キリンホールディングスなど
電気機器 ソニーグループ/パナソニック/富士通/三菱電機など
化学 住友化学/三菱ケミカル/富士フイルムなど
消費財 花王/資生堂/ナンバースリーなど
自動車 トヨタ/日産/ホンダなど
情報・通信業 NTTドコモ/KDDI/ソフトバンクなど
小売業 J.フロント.リテイリング/丸井グループなど
不動産業 野村不動産/三菱地所など
商事会社 三菱商事/三井物産/伊藤忠商事など
まとめ
いかがでしたか?「脱炭素経営なんて、今のうちの会社にできるかなぁ」と思う方もいるかもしれません。しかし会社の規模にかかわらず、今後は2030年、2050年の目標に向けて、この脱炭素経営やカーボンニュートラルが企業経営にとって見過ごせない課題となっていきます。
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