
高圧電力とは?低圧電力や特別高圧電力との違いをわかりやすく解説!
本記事では、高圧電力とは何か、低圧電力や特別高圧電力との違いについて解説します。また、電気料金の基本的な構成として、固定単価プランや市場連動型プランの構成や、高圧電力契約のメリットやデメリットについても詳しく紹介しています。
- 高圧電力の定義
- 電圧による定義
- 契約電力による定義
- 低圧電力・特別高圧電力との違い
- 低圧電力
- 高圧電力および特別高圧電力
- 電気事業法上の区分
- 電気料金の基本的な構成
- 固定単価プラン
- 市場連動型プラン
- 高圧電力のメリットとデメリット
- メリット①:電力量料金単価の削減
- メリット②:安定した電力供給
- メリット③:柔軟なプラン選択の可能性
- デメリット(1):受電設備の設置・維持費用
- デメリット(2):保安管理の負担と責任
- デメリット(3):契約の複雑さ
- 自社の契約が高圧電力か確認する方法
- 電気料金の請求書の確認
- 受電設備の有無の確認
- エネブリッジが提供する「選べる」高圧電力プラン
- まとめ
高圧電力の定義
高圧電力とは、法令で定められた特定の電圧範囲と契約電力の規模を持つ電力供給の区分を指します。
電圧による定義
電圧では以下のように定義されており(※1)、一般的に、高圧電力として供給される際の電圧は交流6,000V(または6.6kV)です。
- 直流:750V超~7,000V以下
- 交流:600V超~7,000V以下
(※1)出典元:電気設備に関する技術基準を定める省令(経済産業省)
契約電力による定義
高圧電力の契約電力は、高圧小口(こぐち)、大口(おおぐち)の2つに分けられ、一般的に50kW以上2,000kW未満の範囲とされています。この契約電力50kWという値は、低圧電力から高圧電力へと区分が変わる重要な境界線です。高圧電力は、契約電力の規模によって主に以下の2つに分けられます(※1)。
(※1)出典元:電気設備に関する技術基準を定める省令(経済産業省)
高圧小口(こうあつこぐち)
契約電力が50kW以上500kW未満の場合に該当します。比較的小規模な工場やオフィスビル、商業施設などが対象です。
高圧大口(こうあつおおぐち)
契約電力が500kW以上2,000kW未満の場合に該当します。中規模の工場やオフィスビル、病院や学校、スーパーマーケットなどが主な対象です。
工場や病院といった施設の種類、つまりその運営規模や使用する設備の特性が、高圧電力の必要性を直接的に生み出しています。例えば、多数の大型機械を稼働させる工場や、生命維持装置を含む多様な医療機器を使用する病院では、必然的に総消費電力量が大きくなり、低圧電力の範囲を超えるため、高圧電力が必要となっています。
このため、新規施設の建設や大規模な設備増強を計画する際には、将来的な電力需要を正確に予測することが極めて重要となります。契約電力が50kWを超えるか否かは、単に電気料金プランが変わるだけでなく、受電設備の新設といった初期投資や、その後の運用体制にも大きな影響を与える分岐点となるからです。
高圧電力の電圧や契約電力の基準値は、単なる数値の違い以上の意味を持ちます。これは、低圧電力とは一線を画すエネルギー需要の規模を示しており、必然的に供給インフラや安全管理体制も異なるものが求められることを意味します。
以上の説明をもとに、高圧小口、大口契約における特徴を以下にまとめました。

低圧電力・特別高圧電力との違い
電気の契約は、電圧の大きさによって大きく「低圧電力」「高圧電力」「特別高圧電力」の3つに分類されます。これらの区分は、供給される電圧だけでなく、契約電力の大きさ、利用される施設の種類、必要な受電設備の有無、さらには電気料金以外の費用にも違いがあります。以下に、これらの電力契約区分を比較した表を示します。

この表からもわかるように、電力需要の規模が大きくなるにつれて、より高い電圧で電力が供給され、それに伴い需要家側で専門的な受電設備を用意する必要が生じます。
低圧電力
利用者は、電力会社の変圧器(電柱上の柱上変圧器など)で100Vや200Vに変圧された電力を直接受け取ります。そのため、自前で変圧設備を持つ必要はありません。
高圧電力および特別高圧電力
高圧電力および特別高圧電力の需要家は、高圧電力であれば6,000V、特別高圧電力であれば20,000~140,000Vと高い電圧のまま電力供給を受け、自社敷地内に設置した受電設備(※)で、施設内で使用できる電圧(100V、200V、または動力用の400Vなど)に変換します。この受電設備の所有と維持管理は需要家の責任となり、設置費用や定期的なメンテナンス、保安点検の費用が発生します。この点が、低圧電力との大きな違いの一つです。
※高圧電力の場合は「キュービクル式高圧受電設備」、特別高圧電力の場合はより大規模な「特別高圧受変電設備」
電気事業法上の区分
電気事業法では、低圧で受電する設備を「一般用電気工作物」、高圧または特別高圧で受電する設備を「事業用電気工作物」と区分しています(※1)。
(※1)出典元:電気設備に関する技術基準を定める省令(経済産業省)
事業用電気工作物のうち、電気事業(電力供給)の用に供しないものは「自家用電気工作物」と呼ばれます。自家用電気工作物には、保安規定の作成・届出や電気主任技術者の選任といった安全管理上の義務が課せられます。この法的区分の違いは、高圧電力を利用する事業者が負うべき責任の増大を意味し、単に電気料金プランが変わる以上の影響があります。
電気料金の基本的な構成
高圧電力の電気料金は、電力会社や料金プランによって異なります。2025年5月現在、多くの電力会社では「固定単価プラン」と「市場連動型プラン」が採用されています。2つのプランについて、以下で説明します。
固定単価プラン
固定単価プランはその名の通り、電気料金単価が契約時に固定されているプランのことです。固定単価プランの電気料金は、以下で計算されています。

基本料金
契約電力に基づいて毎月固定的にかかる料金です。計算式は「基本料金単価×契約電力×力率割引(または割増)」となります。基本料金単価は、各電力会社で異なります。
契約電力
契約電力の決定方法は、高圧小口と高圧大口で異なります。
- 実量制(高圧小口契約)
主に高圧小口契約で採用されており、当月含む過去12ヶ月間の各月の最大需要電力(30分ごとの平均使用電力の最大値、通称「デマンド値」)のうち、最も大きい値が契約電力として決定されます。これは、一度でも大きな電力使用量を記録すると、その後1年間の基本料金に影響が及ぶことを意味します。したがって、この制度下では、瞬間的な電力使用のピークを抑えることが、電気料金削減の重要なポイントとなります。
- 協議制(高圧大口契約および特別高圧契約)
主に高圧大口契約および特別高圧契約で採用されており、電力会社と需要家との協議によって契約電力を決定します。協議の際には、1年間のデマンド値に加え、使用する電気設備の内容、施設の操業パターン、同業種の負荷率などが総合的に考慮されます。需要規模が大きい高圧大口以上の契約者は、配電用変電所を経由しない電力網から直接電力供給を受ける場合もあり、停電や事故時の影響が広範囲に及ぶ可能性があるため、個別の状況を詳細に検討した上で契約電力が決定されます。
力率(りきりつ)
電源から供給された電力のうち、実際に有効に使われた電力の割合を示します。力率が高い(100%に近い)ほど電力設備を効率的に使用していることになり、基本料金が割り引かれます。逆に力率が低いと割増料金が適用されることもあります。力率は、特に多くのモーターを使用する工場などでは無視できない要素であり、改善することで基本料金の削減につながります。
電力量料金
実際に使用した電力量(kWh)に応じてかかる料金です。「電力量料金単価 × 使用電力量」で計算されます。高圧電力の電力量料金単価は、低圧電力と比較して安価に設定されているのが一般的です。料金プランによっては、季節や昼夜などの時間帯などで単価が異なる場合もあります。事前に電力会社の契約内容や、電気需給約款を確認しておきましょう。
再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)
再生可能エネルギーの固定価格買取制度を支えるために、電気を使用する全ての需要家が負担する料金です。「電気使用量 × 再エネ賦課金単価」で計算されます。
容量拠出金
将来の国内電力の供給力を確保するために、小売電気事業者などに課された料金のことです。発電事業者にとって、発電所の保持や運営には多額の費用が必要となり、発電事業者ばかりに負担がかかりすぎないよう、その対価として定められています。容量拠出金は2024年4月から導入されています。
燃料費調整額
発電に使用する燃料(原油、LNG、石炭など)の価格変動を電気料金に反映させるための調整額です。市場価格によって毎月変動し、電気料金の総額に大きな影響を与えることがあります。
市場連動型プラン
市場連動型プランとは、日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格に応じて、30分ごとに電力量料金が変動する料金プランのことです。市場連動型プランの電気料金は、一般的に以下で計算されています。

ただし、電力量料金単価はJEPXの市場価格と全く同じではありません。電力を届ける際に使用している託送料金(送配電網の利用料金)などを電力量料金単価に反映しているため、あくまでJEPXの市場価格は目安として考えておきましょう。
また、市場連動型プランの中には、「燃料費等調整額」や「電力調達調整費」といった各社独自の項目を設けているケースもあります。独自の項目を設けているかどうかは、電気需給約款で確認することができるので、契約を進める前に各社のプランや約款を比較するようにしましょう。
電気料金以外の費用
高圧電力を使用する場合、電気料金以外でも以下のコストが発生します。
- キュービクルなどの受電設備の設置費用や維持管理費用
- 法律で定められた受電設備の保安点検費用
保安点検は、専門知識を持つ電気主任技術者を選任して実施するか、外部の保安法人に委託することが一般的です。上記の費用は、高圧電力を利用する上で考慮すべき重要なコストです。
高圧電力のコスト管理は、単に照明を消すといった節電努力だけでは不十分です。複雑な料金体系を理解し、特に実量制契約の場合は最大需要電力を積極的に管理し、力率を良好に保ち、さらに受電設備の維持管理や保安体制にかかる間接的なコストも予算に組み込む必要があるため注意が必要です。
高圧電力のメリットとデメリット
高圧電力の利用には、メリットとデメリットの両側面が存在します。これらを理解することで、企業が自社の電力契約を最適化することも可能となります。
メリット①:電力量料金単価の削減
高圧電力の最大のメリットは、低圧電力と比較して電力量料金の単価(1kWhあたりの料金)が安価という点です。電力使用量が多い施設にとっては、この単価差が大きなコスト削減につながります。
メリット②:安定した電力供給
一般的に、高圧電力は低圧電力よりも供給系統が安定しており、電圧変動や瞬時停電のリスクが低い傾向にあります。これは、精密機械を使用する工場や、常時安定した電力供給が求められる病院、データセンターなどにとっては非常に重要なメリットです。電力の品質と信頼性は、単なるコスト削減以上に、事業継続性の観点から優先されるべき要素となる場合があります。
メリット③:柔軟なプラン選択の可能性
電力自由化以降、高圧電力の分野では多様な料金プランやサービスを提供する電力会社も増えています。これにより、企業の電力使用パターンやニーズに合わせた、より有利な契約を選択できる可能性があります。
デメリット(1):受電設備の設置・維持費用
高圧電力を利用するためには、キュービクルなどの高圧受電設備を自社で設置し、維持管理する必要があります。これには多額の初期投資と、定期的なメンテナンス費用、故障時の修理費用などがかかります。
デメリット(2):保安管理の負担と責任
高圧受電設備は法律により定期的な保安点検が義務付けられており、そのための電気主任技術者の選任(または外部委託)が必要です。これらの保安管理体制の構築と維持にはコストと手間がかかり、万が一事故が発生した場合には、企業は大きな責任を負うことになります。
デメリット(3):契約の複雑さ
高圧電力の契約内容は、低圧電力の契約と比較して複雑な場合があります。料金体系や契約条件を十分に理解し、自社にとって最適な契約を見極めるためには、専門的な知識が必要となることもあります。
高圧電力の利用は、本質的に「固定費と運営責任の増大」と「変動費(電力量料金)の削減」とのトレードオフと言えます。このトレードオフが有利に働くのは、一定以上の電力消費量がある場合に限られます。受電設備の設置・維持費用という大きな固定費を、電力量料金単価の低さによるメリットで相殺し、さらに上回るだけの電力使用量がなければ、高圧電力への移行は経済的に合理的ではありません。したがって、高圧電力の導入や継続を検討する際には、直接的な電気料金だけでなく、設備の初期投資、維持管理費、保安費用、そして電力の安定供給が事業運営に与える影響などを総合的に評価する、経済的かつ戦略的な判断が求められます。
自社の契約が高圧電力か確認する方法
自社施設がどの電力契約区分に該当するのかを把握することは、適切なエネルギー管理の第一歩です。高圧電力契約であるかどうかを確認する主な方法は、以下の通りです。
電気料金の請求書の確認
電力会社から毎月送られてくる電気料金の請求書には、契約に関する重要な情報が記載されています。
請求書の中に「契約種別」といった項目があれば、そこに「高圧」や具体的な高圧電力プラン名(例:高圧電力A、高圧業務用電力など)が記載されている場合があります。
また、契約種別がプラン名で分かりにくい場合でも、「供給電圧」という項目があれば確認できます。ここに「6,000V」や「6kV」といった記載があれば、高圧電力(または特別高圧電力)である可能性が高いです。
受電設備の有無の確認
施設の敷地内に設置されている電気設備を確認することでも、契約区分を推測できます。
キュービクル式高圧受電設備の有無

金属製の箱型の設備である「キュービクル」が敷地内に設置されていれば、それは高圧電力を受電している証拠です。キュービクルは、電力会社から供給される6,000Vの電気を施設内で使用できる100Vや200Vに変圧するための設備です。低圧電力契約ではこのような自家用変圧設備は不要です。
特別高圧受変電設備の有無

キュービクルよりもさらに大規模な変電設備がある場合は、特別高圧電力を受電していると考えられます。
エネブリッジが提供する「選べる」高圧電力プラン
エネブリッジでは、先に説明した固定単価プランおよび市場連動型プランを扱っており、企業のニーズに併せた高圧電力プランをご用意しています。
固定単価プランと市場連動型プランのメリットを両立させた、「ハイブリッドプラン」では、夏季・冬季の電力市場が高騰するタイミングで完全固定プランに適用する、といったことも可能なため、ぜひエネブリッジの電力プランも検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ
高圧電力は、契約電力が50kW以上2,000kW未満、供給電圧が標準6,000Vで、中小規模の工場やビル、病院、商業施設などで利用される電力契約区分です。一般家庭や小規模店舗向けの低圧電力とは異なり、キュービクル式高圧受電設備を需要家側で設置・管理する必要がある点が大きな特徴です。また、さらに大規模な需要に対応する特別高圧電力とも、契約電力や受電設備の規模で区別されます。
高圧電力の料金は、主に基本料金と電力量料金で構成され、契約電力の決定方法には実量制(高圧小口)や協議制(高圧大口)があります。電力量料金単価は低圧電力に比べて安価である一方、受電設備の維持管理や保安体制の確保といった付随的なコストと責任が発生します。
自社の契約が高圧電力であるかは、電気料金の請求書や敷地内の受電設備の有無で確認できます。この情報を把握することは、企業がエネルギーコストを最適化し、必要なインフラ投資や保安体制を計画し、法令を遵守するための第一歩です。