非化石証書とは？仕組みやメリットをわかりやすく解説！【企業の脱炭素担当者向け】

非化石証書とは？

非化石証書とは、再生可能エネルギーなどのCO2を排出しない「非化石電源」で発電された電力の「環境価値」を証明する証書のことです。非化石証書を活用することで、企業や自治体では環境に配慮されている電力を使用しているということを示すことができ、脱炭素経営をアピールすることができます。

環境価値とは

現在、地球温暖化が加速度的に進行しており、主な原因として、二酸化炭素CO2やメタンCH4などの温室効果ガスの増加が挙げられています。地球温暖化を抑制するためには、大気中のCO2を増加させないことが必要とされています。

そこで、再生可能エネルギーや原子力発電によって「CO2を増加させない」という価値が、「環境価値」として注目されています。環境価値は、電力の価値とは区別された付加価値として定義されており、非化石証書も環境価値の1つです。

環境価値の種類

環境価値には、非化石証書、グリーン電力証書、Jクレジットの3種類があります。それぞれの環境価値の特徴は、以下のとおりです。

非化石証書は3つの環境価値証書の中でも最も発行量が多く、安価で取引されることも多いため、扱いやすい証書として注目を集めています。

また、2026年度から本格的に運用される「排出量取引制度」は、CO2排出量が多い企業に参加を義務づける制度で、温室効果ガスの削減を促し、産業競争力の強化につなげることを目的としています。非化石証書は温室効果ガスの排出量報告に利用できるうえ、非化石証書を購入することで、自社が使用する電気のCO2の排出量を間接的に削減したり、再生可能エネルギーを取り入れたと見なされることから、コスト面や立地などにより再生可能エネルギーの導入が難しい工場や設備を持つ需要家を中心に購入が急増しています。

非化石証書の仕組み

非化石証書の仕組みについて、以下に示します。

非化石証書では、非化石電源で発電された電力に対する「環境価値」が見える化されています（※1）。非化石証書を購入することで、企業や自治体などは非化石燃料で発電したクリーンな電力、すなわち「実質的な再エネ電力」を導入することができます。

（※1）出典：非化石取引価値について（自然エネルギー財団）https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/01_ANRE_240207_RE-Users.pdf

非化石証書の種類

非化石証書には、以下の3種類があります。

FIT非化石証書

FIT非化石証書とは、国が定めた要件を満たし、FIT制度（固定価格での電力買取制度）の適用を受ける再生可能エネルギー電源から取り出された環境価値に関する証書のことです。5つの再生可能エネルギーである、太陽光、風力、水力（小型）、地熱、バイオマス発電が対象となっています。

非FIT非化石証書（再エネ指定あり）

非FIT非化石証書（再エネ指定あり）とは、FIT制度の適用を受けない、再生可能エネルギー電源から取り出された環境価値に関する証書のことです。FIT期間が終了した電力（卒FIT）や、大型水力発電などが対象となります。

非FIT非化石証書（再エネ指定なし）

非FIT非化石証書（再エネ指定なし）とは、FIT制度の適用を受けず、再生可能エネルギーではない原子力発電から取り出された環境価値に関する証書のことです。化石燃料は使用していないため、二酸化炭素を排出しない「ゼロエミ価値」を持ちますが、再生可能エネルギーではないため、「再エネ価値 」は無いという点については、覚えておきましょう。

3種類の非化石証書をまとめると以下となります。

※トラッキング・・・発電所の設備名や所在地、発電出力など、どのような過程で再エネ電力が作られているかを追跡することができる情報のこと

非化石証書を購入するメリット

企業が非化石証書を購入するメリットは以下の3つです。

メリット①：温暖化対策推進法への対策

非化石証書を活用することで、購入分のCO2排出量はゼロとみなすことができます。温暖化対策推進法に基づき、温室効果ガス排出量を国に報告する際にも、非化石証書で購入した分のCO2排出量を削減して算定することが可能になります。

メリット②：企業やブランドイメージの向上

非化石証書を活用することがCSR活動の一部となり、環境問題に取り組む姿勢をアピールすることで企業やブランドイメージの向上が期待できます。近年では、ESG経営（※）を実現するためのツールとしても注目されており、環境価値を高めることで、投資家からの評価や就活生などの求職者、その会社の製品を使用するユーザー（消費者）からの評価に直結するということも示唆されています。

また今後、海外市場での商品取引や工場移転など、グローバルな展開を予定しているのであれば、取引相手国によっては「その企業にどれだけの環境価値があるか」が問われ、非化石証書をはじめとする環境問題への取り組みも、重要な要素となっています。

※ESG経営＝企業が環境（Environment）、社会（Social）、ガバナンス（Governance）の3つの要素を考慮して経営を行うこと

メリット③：RE100への活用

RE100（Renewable Energy 100%）とは、企業が自社で使用する電力を100％再エネで賄うことを目標する国際的なイニシアティブのことです。日本を含む世界中の企業が傘下しており、2050年までに100%再エネ化を目指しています。

このRE100への報告に、非化石証書のFIT非化石証書、再エネ指定の非FIT非化石証書が活用できます。トラッキング付きという条件はありますが、RE100に参加することで企業の社会的価値が高まり、ESG投資（※）も受けやすくなるため、大きなメリットといえるでしょう。

※ESG投資＝企業が環境（Environment）、社会（Social）、ガバナンス（Governance）の3つの要素を重視して投資先を選択すること

非化石証書の注意点

メリットの一方で、注意点も存在します。

注意点(1)：種別や産地

非化石証書では3種類あると説明しましたが、それぞれの種類によって発電方法が異なります。再エネ由来の電力だけということではなく、再エネ指定なしの非FIT非化石証書では、原子力発電由来の電力も含まれているので、注意が必要です。また、RE100に活用するには、FIT非化石証書、再エネ指定の非FIT非化石証書でないといけない点にも気を付けておきましょう。

注意点(2)：取引コストがかかる

非化石証書は、日本卸電力取引所（JEPX）の非化石価値取引市場での入札（オークション）によって取引されているため、入札結果によって価格が変動するという点にも注意が必要です。表2にある通り、2025年5月時点の最低価格は0.4円/kWhですが、今後価格上昇する可能性もゼロではありません。また、そもそも非化石証書の購入においては、「非化石価値取引会員」に加入しなければならず、2024年の年会費は60万円（不課税）となっています。

注意点(3)：証書の使用期限

非化石証書は、日本卸電力取引所（JEPX）の非化石価値取引市場において、8月、11月、翌年2月、5月に行われる入札時に購入することができます。ただし、どの時期に購入したとしても、証書の使用期限は「次の6月」となっているため注意が必要です。例えば、2025年5月に証書を購入すると、購入して1か月後の2025年6月に使用期限を迎えてしまいます。

以上の注意点を踏まえたうえで、自社で非化石証書を導入するかどうか検討しましょう。

非化石証書の購入方法

非化石証書を購入するには、日本卸電力取引所（JEPX）の会員登録をしてオークションに参加するか、小売電気事業者や仲介事業者を通じて購入する方法があります。JEPX への会員登録やオークションに参加するには手続きも多く、またオークションに参加したとしても他社との競り合いで、希望の入札価格を上回ることが予想されます。購入の際は、信頼のおける電気小売事業者を通じて、購入するのが得策でしょう。

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まとめ

この記事では企業の環境価値を高めるために「非化石証書」をはじめとする「環境価値購入」の方法についてお伝えしました。地球温暖化防止対策は今や人類すべての至上命題であり、わが国でも様々な対策が講じられています。2026年度から導入される「排出量取引制度」を見越して、今年は脱炭素経営に向けて一歩前進することをおすすめします。