
グリーン電力証書と非化石証書の違いをわかりやすく解説!
この記事では環境証書取引におけるグリーン電力証書とは何か?非化石証書との違いについてや、企業がグリーン電力証書を購入する方法、購入する際の注意点について解説します。
- 非化石証書とグリーン電力証書の違い
- 非化石証書とは
- 非化石証書の仕組み
- 非化石証書の種類
- 非化石証書の購入方法
- グリーン電力証書とは
- グリーン電力証書の仕組み
- グリーン電力証書の購入方法
- 非化石証書のメリット・デメリット
- 温暖化対策推進法への対策(メリット①)
- 企業やブランドイメージのアップ(メリット②)
- RE100など国際イニシアティブへの活用(メリット③)
- 発電方法が異なる点に注意(デメリット①)
- 取引価格の変動でコストが増す(デメリット②)
- 証書の期限に注意(デメリット③)
- グリーン電力証書のメリット・デメリット
- 環境対策・温暖化対策に活用できる(メリット①)
- 国際イニシアティブの報告に活用できる(メリット②)
- グリーンエネルギーマークによる企業PRが可能に(メリット③)
- グリーン電力によるイベント等の開催(メリット④)
- 他の環境証書と比べて価格が高い(デメリット①)
- 非化石証書よりも発行数が少ない(デメリット②)
- 購入する際は注意が必要(デメリット③)
- 非化石証書とグリーン電力証書の比較
- まとめ
非化石証書とグリーン電力証書の違い
グリーン電力証書と似た制度で、非化石証書があります。それぞれの違いは以下の通りです。
非化石証書 | グリーン電力証書 | |
内容 | 化石燃料を使用しない電力の環境価値を証書化 | 再生可能エネルギーによる電力の環境価値を証書化 |
発行元 | 国が指定した認定機関から認定を受けた発電事業者 | グリーン電力証書発行事業者 |
取得対象者 | 企業・小売電気事業者 | 企業・自治体 |
取引方法 | 取引所のオークションまたは相対取引 | 発行事業者から直接購入 |
非化石証書とは
非化石証書とは、再生可能エネルギーなどのCO2を排出しない「非化石電源」で発電された電力の「環境価値」を証明する証書のことです。非化石証書を活用することで、企業や自治体では環境に配慮されている電力を使用しているということを示すことができ、脱炭素経営をアピールすることができます。
非化石証書の仕組み
非化石証書は、非化石電源で発電された電力に対する「環境価値」が見える化されたものになります(※1)。非化石証書を購入することで、企業や自治体などは非化石燃料で発電したクリーンな電力、すなわち「実質的な再エネ電力」を導入することができます。
(※1)出典:非化石取引価値について(自然エネルギー財団)https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/01_ANRE_240207_RE-Users.pdf
非化石証書の主な購入対象者は、小売電気事業者です。2021年11月以降、電力需要家(一般企業など)も、FIT非化石証書に限り購入できるようになりました。
非化石証書の取引方法は、大きく分けて「市場取引」と「相対取引」の2つがあります。市場取引は日本卸電力取引所(JPEX)が主催する市場で、オークション形式で取引されます。相対取引は、発電事業者と電力小売事業者などが直接取引を行う方法です。
非化石証書の種類
非化石証書には、以下の3種類があります。
FIT非化石証書 | 非FIT非化石証書 (再エネあり) | 非FIT非化石証書 (再エネなし) |
FIT制度の適用を受ける再生可能エネルギー電源が由来(太陽光・風力・小規模水力・地熱・バイオマス) | FIT制度の適用を受けない再生可能エネルギー電源が由来(卒FIT・大型水力など) | FIT制度の適用を受けない原子力発電などが由来 |
非化石証書の購入方法
非化石証書を購入するには、日本卸電力取引所(JEPX)の会員登録をしてオークションに参加するか、小売電気事業者や仲介事業者を通じて購入する方法があります。
JEPX への会員登録やオークションに参加するための手続きは手間が多く、またオークションに参加した際も他社との競り合いで必ずしも希望の入札価格で購入できないことも考えられます。そのため購入する際は、信頼のおける電気小売事業者を通じて、購入するのが得策です。なお非化石証書の価格はオークションによって決まります。
グリーン電力証書とは
グリーン電力証書とは、グリーン電力の持つ「環境価値」を企業や自治体が取引するために可視化した「証書」になります。日本のグリーン電力証書制度は国の認証制度ではありませんが、資源エネルギー庁と環境省が運営する「グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度」により、CO2削減価値が認証されています。
グリーン電力証書が注目される背景としては、多くの企業が脱炭素経営を進める中、再生可能エネルギー設備の導入は初期投資や発電量予測、系統接続の課題により難しい場合があります。そのため、設備投資をせずに環境価値証書を購入することで再エネ利用に貢献できるグリーン電力証書取引が注目されています。
グリーン電力証書の仕組み
グリーン電力証書では、再生可能エネルギーの環境価値を発電事業者がグリーン電力証書発行事業者に売却し、認証機関の承認を得て証書が発行されます。
グリーン電力証書の主な対象者は、再生可能エネルギーの利用による環境負荷低減を推進したい企業や自治体、その他団体です。具体的には、再生可能エネルギー発電設備で発電された電力の環境価値を購入することで、自社の事業活動におけるCO2排出量削減や環境貢献をアピールしたい場合に利用されます。企業が証書を購入すると、その電力量分が自然エネルギー由来とみなされ、企業PRや国際イニシアティブ加盟に活用できます。
グリーン電力証書の購入方法
グリーン電力証書の購入方法は以下の流れで行います。
①「企業が」グリーン電力証書発行事業者と契約
②「グリーン証書発行事業者が」日本品質保証機構の設備認定を受ける
③「グリーン証書発行事業者が」発電事業者へ自然エネルギーの発電を委託
④「発電事業者が」発電実績をグリーン証書発行事業者へ報告
⑤「グリーン証書発行事業者が」日本品質保証機構から電力量(契約量)の認証を受け企業に配分
⑥「証書発行事業者が」企業にグリーン電力証書という環境価値の形で発行
非化石証書のメリット・デメリット
企業が非化石証書を購入するメリットは以下の3つがあります。
温暖化対策推進法への対策(メリット①)
温暖化対策推進法に基づき、温室効果ガス排出量を国に報告する際にも、非化石証書で購入した分のCO2排出量を削減して算定することが可能になります。
企業やブランドイメージのアップ(メリット②)
非化石証書を活用することがCSR活動の一部となり、環境問題に取り組む姿勢をアピールすることで企業やブランドイメージの向上が期待できます。海外市場での商品取引や工場移転など、グローバルな展開を予定しているのであれば、取引相手国によっては非化石証書をはじめとする環境問題への取り組みが有利に働くかもしれません。
RE100など国際イニシアティブへの活用(メリット③)
RE100への報告には、トラッキング付き非化石証書のFIT非化石証書、再エネ指定の非FIT非化石証書が活用できます。RE100に参加することで企業の社会的価値が高まり、ステークホルダーからの信頼アップにつながります。
一方で非化石証書を購入するデメリットは以下になります。
発電方法が異なる点に注意(デメリット①)
非化石証書は3種類ありますが、それぞれ発電方法が異なります。RE100など国際イニシアティブへ参加する場合、再エネ指定なしの非FIT非化石証書は認められないので、注意が必要です。またその他の2種類についてもトラッキング付の証書が原則となります。
取引価格の変動でコストが増す(デメリット②)
非化石証書はJPEX(日本卸電力取引所)での入札(オークション)によって取引されるため、その結果次第では価格に変動があり、予定していた価格で購入できないなどの不都合が生じる場合があります。また直接取引をしたい場合は、「非化石価値取引会員」として登録が必要で年会費がかかります。
証書の期限に注意(デメリット③)
非化石証書は年4回(8月・11月・翌年2月・5月)に開催される非化石価値取引市場で入札・購入できますが、どの時期に購入しても証書の使用期限は「次の6月」となるため、注意が必要です。
グリーン電力証書のメリット・デメリット
企業がグリーン電力証書を購入した場合のメリットは以下の通りです。
環境対策・温暖化対策に活用できる(メリット①)
グリーン電力証書に記載された電力量をCO2削減量に換算することで、企業が自主的に行う地球環境対策や温暖化対策に活用できます。具体的には環境報告書やCSRレポートへの活用で、企業イメージ向上や商品・サービスの付加価値向上につながります。グリーン電力証書の購入により、発電設備を持たない企業でも間接的に環境対策へ貢献できます。
国際イニシアティブの報告に活用できる(メリット②)
下記の表で示した非化石証書との比較表でもわかるように、グリーン電力証書はRE100やCDP、SBTなどの国際イニシアティブから評価を受けています。そのため目標達成の手段としての活用や、報告書などに活用できます。
また温室効果ガスの算定・報告の国際基準であるGHGプロトコルにおいても、再生可能エネルギーの利用状況を把握する上で、グリーン電力証書が重要な役割を果たします。
非化石証書 | グリーン電力証書 | |
RE100 | ※再エネ由来・トラッキング付証書のみOK | 〇 |
CDP | 〇 | 〇 |
SBT | 〇 | 〇 |
RE100・・・企業が事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す国際的な取り組み
CDP・・・国際的環境NGOで投資家、企業・自治体・政府に対しそれぞれの環境に関する情報開示を促す
SBT・・・気候変動に対する取り組みを評価する非政府組織で、科学的根拠に基づいた温室効果ガスの削減が目標
グリーンエネルギーマークによる企業PRが可能に(メリット③)
グリーンエネルギーマークとは、製品の製造等に必要な電力をグリーン電力でまかなったことを製品に添付して表現するマークのことで、マークの使用条件は①製品の生産過程で用いられる電力の10%以上にグリーン電力の相当量が使われている場合と、②グリーン電力証書の購入などが認められています。
下記のウェブサイトで、表示に関するガイドラインや使用の手続きについて説明しています。
グリーン電力によるイベント等の開催(メリット④)
イベント会場で使用する電力を、風力や太陽光などの再生可能エネルギー由来の電力に置き換えることでCO2削減を目指すことができます。音楽イベントや環境系の見本市などに活用されています。
※参考:一般財団法人 日本品質保証機構「グリーンエネルギー認証制度」
一方でグリーン電力証書を購入することのデメリットは以下になります。
他の環境証書と比べて価格が高い(デメリット①)
グリーン電力証書の購入単価は証書発行事業者によって異なりますが、環境省の報告では2〜7円/kWh程度となっています。大量購入では2〜4円/kWh程度とされていますが、下の表の通り、非化石証書に比べると割高です。割高な理由は、市場規模が小さいことや証書の発行量や流通量の少なさにあるといわれています。
非化石証書 | グリーン電力証書 | |
購入価格 | 約0.40円~/kWh | 約2~7円/kWh |
非化石証書よりも発行数が少ない(デメリット②)
下の表は、非化石証書の発行量とグリーン電力証書の発行量を比較したものです。非化石証書の発行量が非常に多いことがわかります。
非化石証書の発行量 | グリーン電力証書の発行量 |
1,208億kWh | 4億3,400万kWh(2022年度) |
購入する際は注意が必要(デメリット③)
グリーン電力証書は「環境価値」の証明として企業の脱炭素経営に活用できますが、購入と並行して省エネや再エネ導入の努力も必要です。環境証書はその種類によって適用基準やメリットが異なるため、慎重に選びましょう。企業PRに活用する際は、正確な情報を伝えることも肝心です。
非化石証書とグリーン電力証書の比較
非化石証書は再生可能エネルギーだけでなく原子力発電由来の電気も含まれ、グリーン電力証書は再生可能エネルギーのみを対象としています。RE100など国際イニシアティブ対応を重視するならグリーン電力証書、コスト優先なら非化石証書が有利ですが、非化石証書の場合は、トラッキング付証書の選択も考慮しましょう。
非化石証書 | グリーン電力証書 | |
購入価格 | 約0.40円~/kWh | 約2~7円/kWh |
RE100など対応 | ※再エネ由来・トラッキング付証書のみOK | 〇 |
まとめ
グリーン電力証書をはじめとする証書購入は、企業が環境負荷を削減し、環境対策への貢献をPRするための有効な手段です。自社の状況に合わせて適切な証書を選択・活用することで、ステークホルダーからの信頼獲得やブランドイメージ向上につながるでしょう。